Q1.関東大震災時の朝鮮人虐殺(5)

A.関東大震災時に大規模な虐殺がなぜ起こりえてしまったのか理解するためには、植民地支配について考える必要があります。当時の日本では、朝鮮人を殺してもかまわないという「不逞鮮人」観や差別意識が強く存在し、侵略の過程で朝鮮植民地戦争の経験を蓄積し、民族差別と迫害を繰り返していました。朝鮮侵略・植民地支配の下で虐殺は発生したのです。

 当然、日本帝国主義による他民族支配という構造を相対化したり矮小化しては、「誤殺」された日本人マイノリティ等の被害の根本原因をも考えることはできません。

 関東大震災・朝鮮人虐殺研究の第一人者である姜徳相氏は、①関東大震災時・朝鮮人虐殺、②社会主義者10名が拷問を受けて殺害された「亀戸事件」、③大杉栄といった社会主義者と家族が殺害された「甘粕事件」を、並列して「三大テロ事件」として一括りに論じることを問題にしました。

 「〔亀戸事件・甘粕事件が〕官憲による官憲の権力犯罪であり、自民族内の階級問題であるに反し、朝鮮人事件は日本官民一体の犯罪であり、民衆が動員され直接虐殺に加担した民族的犯罪であり、国際問題である」からです。姜氏は「異質のものを無理に同質化し、並列化することは官憲の隠蔽工作に加担したと同じである」と指摘し、「日本での問題の取り上げられ方は事件後からこんにちまで、著者〔姜氏〕が強調したと逆の順で関心が強いようである」と日本人の態度を批判したのでした(『関東大震災 新装版』、207-208頁)。