著者:田原洋
出版社:岩波文庫
出版年:2014年
概要
1923年9月の関東大震災の時,朝鮮人や社会主義者に対する虐殺とともに,なぜ中国人に対する虐殺があったのか? 証言と史料の発掘によって,周恩来の親友で日本在住中国人の若きリーダーだった王希天(1896―1923)の死の真相に迫る.加害者へのインタビューが圧巻で,政府ぐるみの隠蔽工作が明らかにされる.
◆編集部より
この書物は,1982年に三一書房から刊行された『関東大震災と王希天事件――もう一つの虐殺秘史』の改訂版です.田中宏先生(一橋大学名誉教授)から,この本を紹介されて,読んだのですが,王希天殺害の犯人への取材を敢行する場面などは,かつて観たドキュメンタリー映画『ゆきゆきて,神軍』とオーヴァーラップして,強く印象に残りました.
1923年9月の関東大震災の時,朝鮮人や社会主義者に対する虐殺とともに,なぜ中国人に対する虐殺があったのでしょうか? 本書は,証言と史料の発掘によって,周恩来の親友で,東京で日本在住中国人のためにセツルメント活動をしていた若き中国人リーダー王希天の死の真相に迫り,政府ぐるみの隠蔽工作を明らかにするドキュメンタリーの傑作です.特に加害者へのインタビューは圧巻.ぜひ書店でご覧ください.
目次
現代文庫版まえがき
序 章 五九年目の新証言
第1章 死地へ赴く
1 関東大震災直後
2 僑日共済会
3 検束された王希天
4 護送か抹殺か
第2章 大島町事件
1 隠された中国人虐殺
2 なぜ亀戸署管内で大虐殺が
第3章 早暁の虐殺
1 野重第三旅団の陰謀
2 「久保野日記」に現われた真実
第4章 王希天を語る
1 一高特設予科時代
2 八高時代
第5章 隠蔽の企み
1 軍隊エゴの論理
2 罹災中国人を本国送還
3 大杉虐殺事件の意味
4 帰還者の告発
第6章 日中間の大問題に発展
1 日本政府の隠蔽工作
2 中国側のジレンマ
3 世論の高まりと調査団結成
4 封じられた『読売』の告発
5 日本政府,隠蔽を正式決定
第7章 すれ違う日中会談
1 日本側の””迎撃””準備
2 王調査団,東京入り
3 「隠蔽」は大成功?
第8章 日中関係史の袋小路
1 賠償金支払いで””解決””へ
2 虐殺関係者のその後
終 章 事件発掘史
あとがき/主要参考文献/取材協力者(団体)一覧